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井上ピアノ教室


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五月の風に誘われて

投稿日:2014-05-06

さわやかなお天気に恵まれた連休後半、皆さまいかがお過ごしでしたか。我が家はちょっと早起きして、信州の安曇野へ行ってきました。

 

八王子から「あずさ1号」で松本へ。雲ひとつない青空だったので、大糸線をふらりと途中下車、てくてく歩くことにしました。折り紙を並べたような水田の向こうに、屏風のようにそびえる残雪の北アルプス。雄大な山並みを眺めていると、何もかも忘れ、心が解き放たれていくような気がします。もうすぐ田植えが始まるのでしょうか。田んぼには水が引き込まれ、鏡のように北アルプスの山々を映し出しています。聞こえてくるのは、小川のせせらぎと風の音だけ。いつまでも歩いていたいような小径でした。

 

 

 

蔦のからまる碌山美術館。生命力あふれる作品と美術館の落ち着いた佇まいに心惹かれ、何度か訪れています。1879年、安曇野で生まれた荻原碌山は、画家をめざしてニューヨーク、パリへ留学しますが、ロダンの「考える人」を見て衝撃を受け、彫刻家を志すようになります。帰国後、30歳の若さで他界。最後の彫刻となった「女」の像は、我が身を削り、この作品を作ることにすべてを注いだ碌山の魂が宿っているようで、胸を打たれました。

 

東大寺二月堂「お水取り」

投稿日:2014-03-13

伊勢志摩を旅行中、ふと東大寺で「お水取り」が行われている時期であることを思い出し、急遽予定を変更して奈良へ向かいました。

 

二月堂の前で、震えながら待つこと1時間半。すべての灯りが一斉に消され、真っ暗闇になると、境内は一瞬、静まり返りました。午後7時、鐘の音が始まりを告げます。舞台左手の登り廊のあたりが、ほのかに明るくなりました。お松明(たいまつ)に火が灯されたようです。長さ6、7メートルはあるでしょうか。赤々と燃え盛るお松明を担いだ童子が、練行衆(籠りの僧)を先導しながら長い石段を登っていきます。練行衆をお堂の中へ送ると、お松明を欄干の外へ。屋根を焼き尽くしそうな勢いで燃えるお松明を振り回しながら、回廊を一気に駆け抜ける様は圧巻でした。舞台の突当りで童子がお松明を打ち振るうと、火の粉が滝のようにこぼれ落ち、どよめきの声が上がりました。この火の粉を浴びると、健康になるという言い伝えがあるようで、真下にいる人はこぞって手を伸ばしていました。登り廊からまた、次のお松明が、ゆっくりと上がってきます。

 

 

お水取りは、正式には「十一面悔過(けか)」と呼ばれます。二月堂本尊の十一面観音菩薩に東大寺の僧侶が人々に代わって懺悔し、天下泰平、五穀豊穣、人々の幸せなどを願って祈りを捧げるものだそうです。前行、本行を合わせると、1か月にも及ぶ法要だと聞いています。大仏開眼と同じ752年に始まり、1260年以上一度も途絶えることなく続けられてきた由緒ある行事。参拝客が帰ったあとも、底冷えのするお堂の中では、修行僧が私達の代わりに一心不乱に祈り続けてくれているのかと思うと、ただ、ただ手を合わせたくなりました。

 

水とりや氷の僧の沓の音  芭蕉

 

お水取りが終わると、大和路に春が訪れると言われています。皆さんのもとにも、早くあたたかい春がやってきますように…

 

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