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フォルテピアノアカデミーSACLA受講を振返って

投稿日:2022-08-23

7/22〜7/24に行われた〈フォルテピアノアカデミーSACLA〉から4週間が経ち、いくらなんでもこの辺ですこし振り返る時間を取りたいと思います。

今年第4回になる小倉貴久子先生プロデュースのフォルテピアノアカデミーは、川口成彦氏をゲスト講師として迎え、7月22日に開かれました。

18名の受講生たちは受付を済ませ、前から知り合いだった関西の友人、Facebook で見かけていた方々、浦和駅からたまたま一緒のバスに乗合わせた受講生の親子さんたちと歓談をしながら、11時から始まる小倉 貴久子先生と川口 成彦さんによる6台の鍵盤楽器によるオープニングソロコンサートの会場に入っていきました。

会場に並んだ6台の楽器はそれぞれ、これからの3日間でホールレッスン、リハーサル室レッスンで使われる楽器群です。

2人の先生方のソロ演奏は素晴らしく、ここに居合わせている自分がとても幸せでした。

 

コンサートが終わると軽く食事を済ませ、すぐに午後からレッスンが始まりました。ホールとリハーサル室レッスンを行き来し、3人の受講生の方を聴講しました。その後練習室のジルバーマンの部屋で、40分練習です。それが終わると間もなく、私は初日に川口成彦先生のホールレッスンでした。7月に入ってから見始めたカール・フィリップ・エマニュエル・バッハのファンタジーという曲がとても魅力的で、どんどんハマってしまって、これを3日めの受講生コンサートに弾けたらいいなと思っていたので、初日はこの曲を持って行きました。ホールにはタンゲンテンフリューゲルとワルター、ブロードウッドのスクエアピアノ、クラヴィシンバルムの4台が設置されていましたが、そのひと月くらい前に同じカール・フィリップ・エマニュエル・バッハのロンドニ長調を小倉先生のレッスンに持って行った時には「タンゲンテンフリューゲルで弾けますね。」と言われていましたので、このファンタジーもタンゲンテンフリューゲルで弾けると思って弾き出しましたら、高音も低音も鍵盤が足りません。(笑)そこで隣にあったワルターで弾きましょうと言われ、場所を移りました。この日のレッスンは自分で録画したのですが、実はまだ全部見ている余裕もないくらいです。

 

そしてこのレッスンの後、まもなくもう1回練習時間があり、今度はクラヴィコードの部屋でした。1回めのレッスンが終わったということで開放感やドキドキ感が入り混じっていたと思いますが、練習室に入った途端、小脇に挟んでいたスマホを落としてしまって、何と液晶画面が真っ黒に。このアクシデントで、この日は6時20分に練習を終えると同時に受付に走り、スタッフの方々に検索をご協力を頂き、浦和駅近くのスマホショップにタクシーで駆けつけることになり、夜間受講生たちに開放されたホール練習は出来ずじまいで終わってしまいました。

身分証明書をひとつも持ち合わせていなかった私は、スマホを修理に出すことはおろか買い換えることすらできずじまいで、途方に暮れて帰途に着きました。が、電車の中で楽譜を見るために iPad を持ち合わせていたことを思い出し、急に元気が出ました。これで写真も撮れるし、メッセージのやり取りはできるし、まぁ電話はそんなに使うわけじゃないから大丈夫!となりました。翌2日めは何と言ってもスケジュールがいっぱいですので、この日は早めに頭を切替え、のんびりしたと記憶しています。

 

翌23日は午前中3人の受講生を聴講し、お昼休みに友人に携帯を借りて、家にいる母に電話をしました。元気でアカデミーが始まったよ、と連絡するつもりだったのですが、開口一番「困ったことがあるのよ。」と言われ、なんと母がコロナにかかったと聞かされました。老齢者なので家族の一筆がないと薬が出せないと医師に言われたらしく、私は東京だし、近くに住んでいる兄も仕事で駆けつけるわけにはいかず困っているという感じでした。しかしながらどうにかするからみたいな感じで電話は切れましたが、さて何をどうしたらいいんだろうみたいな頭で、大変でした。

私はアカデミーの前日から東京入りしていて、母はきょう土曜日にコロナにかかったということなので濃厚接触には入らないかなと思ったりしたのですが、スタッフの方に話をしたら、それじゃあ大丈夫ですねと言ってくださって、ほっとしました。

お昼休みの後すぐにクラヴィコードの西野晟一朗Seiichiro Nishino先生のコンサートが始まり、繊細ながらとてもインプレッシヴな演奏に感動しました。その後デュルケンとクラヴィコードの練習室で、各40分練習でした。夕方4時から小倉先生のレッスンがあり、リハーサル室のクリストフォーリが弾きたかったので、スカルラッティとエマニュエル・バッハの両方の譜面を持って行ったところ、どちらから弾きましょうと言われ、やはり学生コンサートで弾く方からやりましょうねと言われ、エマニュエル・バッハをワルターで弾くことになりました。結局1曲だけでレッスンが終わってしまったので、クリストフォーリは触れずじまいでした。

 

終わるとそそくさとおにぎりで夕食を済ませ、5時半から西野先生のクラヴィコードワークショップ講義がホールで行なわれ、この時は名古屋から来たピアニストの友人や東京在住の元レッスン生の社会人とも再会し、一緒に写真を撮ったりはしゃいでいました。

その後西野先生のクラヴィコードワークショップ第6グループの体験レッスンが始まり、夜7時半からホールの楽器が開放され、昨日は参加できませんでしたがこの日は4台の楽器をそれぞれ少しずつ弾かせて頂き、ホールの響きも堪能しました。

9時過ぎにホールを出て仲間達と、バスと電車を乗り継いでそれぞれ帰路に着きました。道中のおしゃべりも、すごく楽しかったです。

 

そんなこんなでスケジュール目一杯の中日でしたが、さてひとりになるとお昼に聞いた母のことが心配になってきて、はて兄や甥っ子に電話をしようと思ってもその前日にスマホを壊してしまっているので、携帯番号も分からずじまい。まぁ母のことだからなんとか一人で切り抜けるでしょうけど、今後の事をどうしたものか名古屋の知合いの医師に相談メールを書いたり、自分が名古屋に帰ってからやるべきことは何かと、リストアップしたり。

そんな中、そういえばきょうの小倉先生のレッスンで、第1日めの川口先生のレッスンで言われたことと解釈の面で相違点があり、どちらの解釈もありと分かりはするのですが、なにぶん翌日にその曲で学生コンサートを控えているので頭の中が混乱しています、とお話したところ、きっと小倉先生が川口先生にお話してくださったのだと思います。夜、川口先生からメッセージが入り、バロック作品の楔マークの解釈について丁寧に解説をいただきました。でもゆっくり読んでいるこころの余裕もないまま、wi-fi のきいているホテルにいる間しかネット検索やメッセージ交換ができないので、頭の中はコロナだらけでした。川口先生にお礼の返信が書けたのは朝方だった、と思います。

 

さてアカデミー最終日の3日めは、午前中聴講したかったのですけどバテてしまい、少しホテルでゆっくりしていました。ひょっとして母のコロナが移っていたりしたら、この日あたり発症かなと思い、時間を稼いでいたということもあります。でも熱もないし、全く元気だし、大丈夫と思って出かけました。

到着するとすぐに1時から小倉貴久子先生と川口成彦さんによる2台ピアノのプログラムでのコンサートがありました。お二人の演奏はずっと前から聞きたかったので、とても嬉しい気持ちになりました。

コンサート後はすぐにジルバーマンでの練習があり、終わってすぐにリハーサル室で川口先生のレッスン受講でした。これがまた面白くて、この日のレッスンが学生コンサートの自分の出演時間の3時間前でしたので、私はそんな演奏する数時間前に演奏する曲のレッスンを受けてもどうしようもないという考えで、スカルラッティを用意していました。そうすればこのリハーサル室のクリストフォーリが弾けるし、と思っていたのですが、時間になるなり「あ、黒田さん、こんにちは!ではきょう学生コンサートで弾く曲をやりましょう。」ということで、またまたワルターでエマニュエル・バッハと相成りました。(笑) しかしこのレッスンが素晴らしく、川口さんの経験に基づく強いメッセージを受け止め、レッスンで言われた3か条だけに集中し、ラッキーなことにクラヴィコードでの40分間練習が入っていたので、その後の3時間はまさに火事場の馬鹿力発揮でした。

音大を卒業して数年後に名フィルのフルート奏者、打楽器奏者の方と、近藤 譲の大変難しい現代作品を演奏したことがあり、その時1回めのリハーサルはもちろん、2回めのリハーサルもてんでわからず、当日のGPでもうまく合わず、まぁなんとかなるでしょうとか言われ、楽屋に入ったものの落ち着かず、お弁当を食べながら楽譜を広げ、じぃ〜っと見つめていたら、頭の中で曲の全体が見渡せ、本番だけはうまくいったという経験があり、こうした火事場の馬鹿力を発揮した経験が若い時にあるということはどんなにかすごいことかと、今更ながら思い知らされました。

みんな何ヶ月も時間をかけて練習をしてきたということがよく分かるほど、念入りに受講曲を練習されていた方が多かったように思いますが、私がこのカール・フィリップ・エマニュエル・バッハのファンタジーWq61-9 B durを譜読みし初めたのは、課題曲提出を過ぎて7月に入ってから。他に用意していたエマニュエル・バッハのロンドよりずっと魅力的で、どんどんハマってしまって、どうしてもこれを受講生コンサートで弾きたいな〜と思ってしまった私。(笑) 結局成り行きでアカデミーの3回のレッスン、全て受講曲はこの曲だけになってしまった私。(笑) そして3回のレッスンとも、ワルターを弾くことに相成った私。(笑) まぁ、やるっきゃないでしょう。川口先生のレッスン終了後3時間の間に日頃の3、4倍の集中力で準備を整え、受講生コンサートが始まった頃にはすべてをやり終えた気分で、舞台袖に入っても緊張感のきの字もありませんでした。こういうところ、自分でも可笑しいくらいです。そして6分間、とても楽しく演奏できました。弾いている途中で、「あ、今とってもいい音色が出たな。」みたいに感じられたところが数箇所あったりして、じつに楽しかったです。

受講生の皆さん、とても素晴らしい演奏で、初めてフォルテピアノを触ったという方も中にはいらっしゃったということですが、そんなこと信じられないくらいでした。クラヴィシンバルムとスクエアピアノの2台を使って、颯爽と演奏した方が、印象的でした。私は3日間ワルター尽くしだったのに〜、って!(爆) 

   

   (受講生コンサートを終えて)

 

1日めの自分のスマホ落っことし事件と2日めの母のコロナ罹患事件という、ふたつのアクシデントの狭間でがんばり通せたのは、素晴らしいアカデミーの充実したスケジュール、先生方の真剣勝負の熱心なご指導、受講生仲間の皆さんの音楽への厚い情熱の賜物です。

 

アカデミー修了後もコロナ感染者の報告はなかったとお聞きし、ほっとしています。

 

そしてこの3日間のアカデミーでいったい自分は何を得てこられるのかなと、始まる前とても疑問でしたが、見たこともないたくさんの楽器から先生方が引き出す極上の音色に触れ、自分も同じ空間で様々な楽器を自由に操れる環境、そして受講生の皆さん方の様々な演奏を聴く中で、自分の音を客観的に捉えることができたことは大きな経験になったと思います。

そしてレッスンで諭されたことやテクニックのベーシック、これはまさに私が自分の教室で自分たちの生徒にレッスン中言っていることでもあり、また自分が演奏をまとめてゆく上でやっていることではありましたが、自分がやってきたのはそのほんの入口であった、という気づき。入口まではやれていたから、先生のご指導もするするとレッスン時間内に入ってきて、聴講していた友人からも「レッスン内にみるみる音色が変わって、すごかったよ。」とか言われました。とっかかりは間違っていなかったし、方向性も正しかったですが、そのもう一歩、もう2歩先が見えていなかった自分に気づかされ、アカデミーから帰ってからの自分の練習は、これまでの数倍から10倍もはかどっているという現実が頼もしいです。

 

東京から戻って10日めに門下生コンサートがありプログラム未定のままでいましたが、恒例の先生からのプレゼント演奏として「Largo変ホ長調遺作」「ラルゴ変ロ長調/チェロソナタ作品65から第3楽章」「ノクターン第2番作品9-2/ショパンのオリジナルヴァリアント版」「24の前奏曲」より10曲/ショパンを、急きょ弾きました。アカデミー前の自分としては、ちょっと考えられない変化です。

 

アカデミーのほんの数日間に、たくさんの正しい知識と how to、そして音楽への多大なエネルギーをいただきました。

 

これからも頭の中をよく整理して、練習の三原則を常に忘れず、またここから発展していけるよう精進してまいりたいと思います。

ありがとうございました。

   

 

 

 

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