レッスン楽器


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井上ピアノ教室


ブログ

クリスマスの小さな思い出

投稿日:2015-12-10

木々の梢がすっかり葉を落とし、コートの季節になると思い出す出来事があります。

 

子供たちが通っていた幼稚園では、クリスマスに年長の園児たちがイエス・キリストの生誕劇を演じることになっていました。12月に入るとお友達の間でも、誰が何の役をやるのかという話題で持ちきりのようでした。

 

当時、重い病で主人が床に伏していたため、私は築地の病院まで毎日通わなくてはならず、幼稚園の送り迎えもままならぬ日々を送っていました。

 

あれは教室に真っ赤なアドベント(待降節)のろうそくが4本飾られた頃だったでしょうか。園に迎えに行くと、息を切らせて娘が走り寄ってきました。「マリアさまをやることになったの。」一瞬、自分の耳を疑いました。

 

これは我が家の状況を見るに見かねた先生方が、娘の気持ちを推し量り、配慮してくださったに違いないと思い、職員室へ駆け込みました。すると先生は「私たちは何もしていませんよ。お母さま方が相談して決められたことなので。」と微笑みながら言われるのです。

 

園庭でお母さま方にお礼を言おうとすると、どなたも「子供たちが決めたことなので。」とニコニコしておられるだけなのです。

 

マリアは、天使と並んで人気の高い役。ずっとマリアになりたいと年長のクリスマスを心待ちにしていた子も多かったはずです。その役を、何も言わずに黙って娘に譲ってくれたお友達やお母さまの気持ちが、痛いほど心に沁みました。

 

あの出来事を思い出すと、今でも明かりがぽっと灯ったように心の中があたたかくなります。

 

みなさんのもとにも、幸せがたくさん訪れるクリスマスとなりますように…

 

 

 

 

閉店後の時間

投稿日:2015-08-30

8月の終わりに夏休みをいただいて、しばらく旅に出ていました。

 

非日常の中に身を置くと、塩をふった青菜のようにくたっとしていた五感が呼び起こされるのでしょうか。体全体がセンサーになったように、音、におい、気配に敏感になります。

 

思い切って、携帯のスイッチをオフにしました。心をしーんとさせると、いつもは霧に包まれて見えなかったものが、うっすらと見えてきます。

 

やらなければならないことに、ただ押し流されるのではなく、少しずつでも積み重ねてゆける毎日でありたい、と思います。

 

この夏のかけがえのない思い出を胸に、みなさんも元気に新学期をスタートできますように…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カンテラの灯り

投稿日:2014-10-05

若い頃は、子育てをしながら仕事をすることに精一杯で、まわりのことを見渡す余裕はほとんどありませんでした。でも、人生の折り返し地点を過ぎ、子供たちにも手がかからなくなってきた頃から「社会を担っていく世代になったというのに、このままでいいのだろうか」という疑問が頭をもたげてきました。

 

生きていると、突如として思いもよらぬ試練に見舞われることがあります。出口の見えない暗闇のトンネルの中を、来る日も来る日もさまよい続けたことがありました。もうだめだ、とあきらめかけた時、遠くかすかに、灯りがゆれているのが見えたのです。「こっちだよ。こっちだよ。」とカンテラを持った人が現れて、道を照らしてくれたのでした。力尽きそうになった時、もし、あの小さな灯りがなかったら、歩き続けることはできませんでした。苦しみを勇気に、悲しみを希望に変えてくれたカンテラの灯りのように、今度は私が、自分の置かれた場所で誰かの力になりたい。心の底からそう思うようになりました。

 

ピアノを教えるというのは、ただ技術を伝えるだけでなく、人の心を育て、ささえていく仕事なのではないかと考えています。今、子供たちは、学校でも家庭でも、がんばれ、がんばれと言われ続け、とても疲れているようです。どこかに、やり場のない気持ちを受け止めてくれる居場所があれば、明日からまた、新しい世界にチャレンジしてゆけるのではないでしょうか。お子さまにとっても、お母さまにとっても、ピアノ教室が、そんな「心の拠り所」のひとつになってくれたらと願っています。

 

台風の進路が気になりますね。明日の通勤、通学への影響ができるだけ少なくすみますように…

 

 

 

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