ピアノ教室コンセール・イグレック♪
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ブログ
実りの秋に
投稿日:2011-11-22
この秋、先月末より生徒たちの受賞続きである。
9月末にパリでの気分転換から戻って帰国当日からのレッスンから翌月に入ってすぐに行なった休日返上の試演会は少々きつかったが、今となってはがんばってきた甲斐がある。
入ってきて2、3年の生徒たちから1年余の生徒までまちまちだ。コンクールなどで結構がんばってきた生徒たちがほとんどだが、あらためて基本に忠実に教えてほしい、と私のところに来て以来である。いずれも漸く身をもって教えてきた成果が出てきた、というところ。
技量も少ないかわりにこれまで勉強した曲も少ないというパターンはよくもわるくもこれ迄の勉強量が少ないので、私のレッスンでの教えが素直に入り、もちろん性格にもよるが、成果が出るのが早いというケースもある。一方、コンクール歴もあってとり上げてきた曲数も割かし多い人ほどいろんな情報が頭にも身体にも入ってしまっていて、まずはニュートラルに戻すまでに時間がかかる、というケース。後者のほうが教える側にとってそうは容易くない、ということはすぐにおわかりだろう。でもこうして徐々に芽が出始めたこと、とても嬉しく思う。
とくに先のショパンコンクールin ASIA地区予選では小学5,6年部門に参加した3名全員が受賞。このほど行なわれた日本ピアノ教育連盟ピアノオーディションでも小4生徒がふたりとも賞に入った。同門のなかで凌ぎ合う、というのはなかなかいい環境になろう。
また兄妹、姉妹そろって同時期に受賞というペアが2組いて、これも家族のなかにいい音楽の風が湧き起こっている証拠であり、とても喜ばしいのである。刺激しあい支えあって、いい音楽環境を家のなかに持ち続けてもらいたい。
でもこういったコンクールでの受賞というのはひとつのバロメータであり、温かい気もちにはなるがいつまでも飛びあがっているほどの大した意味はない。地区予選を通過したら、大喜びできるのは当日限り!ひと晩明けたら次の大会に向かって自分の演奏を磨いていく努力をする責任が課せられている。
よしんばそういう努力ができなければ、予選通過できなかったひとたちに対して失礼というものだろう。少なくとも私は、そう思って指導している。
今回の生徒たちの受賞も、ここまで来るには念の入ったレッスンと本人の努力の積み重ねの連続であり、さらにここから発展していってもらわなくてはいけないし、他の生徒たちの中にも芽吹く数歩手前にいる生徒たちは多い。またこういったコンクールとは関係なく充実した理解度をアップさせている社会人を含むアマチュア生徒も多い。
さて私は、というと、3日のペライアのリサイタル、大いに楽しんだ。
いぶし銀のような人生の実りを感じさせる音だった。
最初に弾かれたフランス組曲第5番は、現代ピアノの伝統的タッチによる正統なバッハ演奏。
素晴らしく軽やかで、舞曲のリズミカルな側面を抽出していた。
前半最後のブラームスが一番充実していたように思えたが、ゆっくりめのテンポで丁寧な歌ごころをたっぷりと聴かせる。後半1曲目のシューマン「こどもの情景」も卓越だった。
左手がとても美しく、ほんとうに10指のコントロールが美しい。
奏者後方で聴いたが、上半身の使い方や腕の巧みな使い方などを、私はまるでレッスン生のようにじっくり見入り、聴いていた。後半ラストのほうでは、ほんの僅かにアンバランスな気配が出てきた感触。・・・それでもアンコールも数曲、精力的に聴かせてくれた。
実はペライア、指の故障で演奏活動から遠ざかっていた時期があったのだが、こうして彼のピアニズムを再び生で聴くことができたことを嬉しく思うし、そういった往年のファンとみられる姿も多かった。
そうしてきちんと身についた身体の動きというものは年齢に関わらず、美しい動きをともなってタッチの美しさ、そして音の美しさとつながるものだ、とつくづく思った。
このごろ私は来月初めにコンサートを控え、レッスン後にも練習の毎日。
昨年は生れてはじめての腱鞘炎騒ぎ(?)・・・(手が痛いと言いながら普通に弾けていたのだからまったくもって???なのであったのだが)、複数の治療を受けながら留学時代の友人から聞いていたアレクサンダー・テクニークのことが気になっていたところ、今春になって名フィルの友人に先生を紹介してもらい、またその後他の講座にも出るなどしてこのレッスンを受け始めた。
このテクニークは座る、立つ、膝をおとすなど日常的な動作のなかで自分の体の動きを見つめながら内在する自分の動きを洞察し、ありのままの動きを取りもどす、とでもいったらよいか。これがもちろんピアノにも応用でき、私のレッスンでもすでに効果が出てきている。
イギリス、オランダなどではバレエ、舞踊、楽器演奏などとこのテクニークとの関連はとても自然で広く知られており音楽大学のなかでもとり入れられているところもあると聞くが、日本では・・・以前日本ピアノ教育連盟の研究大会ですこし触れられたと記憶するが、まだまだ知られていない。
習慣となっている身の動きの微調整を図ることは、最初はとくにたいへん繊細でむずかしいことでもあり、ピアノ・テクニックの習得とたいへん似ていると私は思う。
レッスンでわかった、わかったと思ってもまたすぐ自分の習慣に戻るから、身体が自然にこちらのほうが合理的で自然なからだの動きである、と十分納得するにはある程度の時間がかかる。ただ分かりかければある程度すっと進むところも、ピアノ・テクニックと同じだ。
でもまた「わかった。」と思ってもその奥義は深いもので、じわじわと自分のなかで熟成するのにはまた時間が要るだろう。
いずれにせよ、ひとつひとつの動作、所作を丁寧にこころして行なう、という弁えに通じること、それは茶道や華道といった禅の精神につながることだと直感している。
ひと昔前には「禅のこころがわからずして音楽も分からない。」という言葉もあったが、今どきのこどもたちにそういった精神をつたえてゆくことは途方もなく遠いような気もするが、音楽の精神とはそういうものだ。
私はピアノを通して、これからも確実に音楽のこころを伝えてゆきたい、と思っている。
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