ピアノ教室コンセール・イグレック♪
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Verbaniaでのコンサート出演、実りおおきく
投稿日:2025-05-11
ペルージャ音楽院教授Costantino Mastroprimiano先生のマスタークラスが北イタリア、ヴェルバニアで、1842年製プレイエルを使って、4/29〜5/2にわたり行われました。
先生は上から目線ということなく7人のいろいろな音楽的資質をすぐに読み取って、当人の理解度に合わせた素晴らしいレッスンが繰り広げられました。曲の解説が始まると、先生は全員をピアノの周りに集めて先生の解釈や誰も知らないような目から鱗の先生の長い年月をかけて確立したであろう持論を繰り広げ、それらを受講生全員で共有されたのです。これだから聴講したとしても、ピアニスト、ピアノ学習者のみならず、すべての楽器に携わる音楽家や音楽愛好家に有効なものだったと思います。
こうして優に1時間を超える自分の受講と6時間以上にわたるクラスメイトたちのレッスン聴講が3日続き、4日めにはGrand Hotel Majesticサロンでのコンサート。
使用された楽器はフランス、ノアンのジョルジュ・サンドの館にあった、ショパン自身が弾いた1842年製Pleyel、貴重なフェルトや鍵盤までもオリジナルのまま、ダットリーニ氏により修復されたもの。
ジョルジュ・サンドの館でショパンが所蔵し、弾いていたプレイエル。その音色を、4日間の滞在中私たちは30時間近く聴いていたことになります。しかもまた、その音色しか聴いていないことにも。
私は2023年夏、フランスのショパン時代のプレイエル修復家Amerigo Olivier Fadini氏のピアニーノを、ノアン、ジョルジュ・サンドの館で弾かせていただいたことがありますが、そのショパンの溜め息のような音色は忘れることができません。
今回イタリアで、5月2日の Grand Hotel Majestic - Verbania, Lago Maggiore でのコンサートで弾いたPier Paolo Dattrino氏修復のプレイエルは、先ほども 話した通り、実際ショパンがサンドの館で弾いていたものということ。
その生音はこれまで聴いたことのないくらい繊細な線で紡がれた織りものの宝飾品のよう。録音も録ってきましたが、録音の音からは全く想像できないほど、全く繊細な異空間でした。
自分がプレイエルの前に座って弾いている音は録音の音に近いですが、客席のもう2列目にでもいたら、ごくごくピアニシシモからピアノの極細の音色に包まれるまったく異次元の音でした。ショパンの囁きであり、ため息である。【弟子から見たショパン】にある人々のショパンの演奏に対するコメントのように、「湧き出る音は煙のごとく立ち込め」「鍵盤を撫でるように弾くと感受性に富み悲嘆を秘めた魂が立ち昇る」。まさにショパン時代の音空間に身を置く幸せは、その場にいた者にしかわからない夢のような時間。
Mastroprimiano先生の巧みなリードで7人全員が4日間で変化を遂げ、ほんとうにこころに残る演奏でした。
コンサートの前日は先生もみんながうまくいくかわくわくされていましたし、私もこのマスタークラスの呼びかけ人として、今回の渡伊がみなにとって充実したものになるのかということは最初からずっと気にかけていました。
なので当日の通し稽古の時間、全員がそれぞれに変化をみせているのを聴き、涙がこみ上げてくるのを禁じえませんでした。
ホテルの支配人の方はウィーンのご出身のイケメンで、私たちの演奏会終了後に美味しいシャンパンをご馳走してくださったり、食事会ではヴェニス在住のプロデューサー、マリアンジェラさんも同席され、楽しいお話を聞かせていただきました。
その後のMastroprimiano先生のリサイタルは、息を呑むほどの素晴らしい演奏でした。プレリューディングやアインガングで紡がれたプログラム、アンコールには、ちょうど私が12月や 3月にコンサートで弾いたばかりの曲が続きました。
コンサート会場グランドマジェスティックホテルのホールは、ショパンがパリデビューしたサル・プレイエルを模した作りになっていて、素晴らしい音響。まるでショパンが弾いてるのではないかと思われるくらい繊細な音の襞の数々を聴きました。それはショパンの様式美を真に理解し、倍音の美しさを紐解き、アゴーギクのもたらす自然な息吹と高揚、それらがもたらす真の芸術を伝える、最高のひとときでした。
そして当日の模様は、新聞とTVでも紹介されました。
今回のマスタークラスの発端は、昨秋先生との何気ないチャットから。NYで発見されたショパンの新しいワルツについて先生と短くディスカッションした後、私がその頃録音したばかりのかながわアートホールでのテイクを添付し、「このくらいは弾けるようになったけど、これをPleyelで弾いたらまだまだですね。」と言うと「Chopinの作品はPleyel抜きでは語れない。」と言われたので、「日本ではプレイエルでレッスンを受けているが、そのレッスンの場に行ってプレイエルを1時間なり弾くだけであって、家に帰ってきたらまたモダンピアノで練習せざるを得ない、そんな環境だ。」と話すと、ひと言ふた言めに「では日本人対象限定ということで、私のマスタークラスを開こう。」ということになったのでした。先生はもちろんこの段階で、マスタークラスをどのように開くか、どこの楽器を使ってどんな場所でのアレンジか考えられるのか、そんなことはもうお手のものでさっとアイデアが浮かんでいたのでしょう。けれど、チャットで言われただけに過ぎない、フライヤーの1枚があるわけでもない、事務局を通すわけでもない、まったく個人的なもの。私の呼びかけで私を含め5人は集まったものの、そこからがなかなか伸びず。私の知る限りのあらゆる関係者に話をしたものの 、書類一枚もないし、やはり今一つ感触がぬるいまま。先生にも申込み書を作ってくれと何度も提案したけれど、先生には先生の考えがあったようで、結局は12月末日の締切を過ぎて年明けにちょっとしたフライヤーを作ってきたのみ。私はこのマスタークラスのオーガナイザーでもアテンド役でもない、ただ一人の受講生の立場であるので、SNSで公開募集することにはためらいがあり控えてきたのでしたが、1月の最終2週間のみFacebookで公開したところ、受講仲間のインスタも通して締切日の1日前と当日になって2人が追加参加することになった。この2名は、私が全く知らない方である。
しかし音楽の力というものは大きい。【ショパンとプレイエル】というテーマに特化した今回のマスタークラス、そこに向けての情熱と行動力を持った 受講生7名は、大変個性的でありながら節度と協調性を持った素晴らしいメンバーでした。
私からMastroprimiano先生にデマンドしたことは1つだけ。4日めの最終日は、レッスンを少し短めにしてもいいから受講生たちのコンサートタイム を持ち、その後先生の演奏が聴ける時間を設けてほしい、ということだった。私のイメージとしては、レッスン会場で受講した曲から1曲ずつ弾き合いっこして、その後先生の演奏が2、30分聴けたらいいな、くらいのものでした。
それがこんなことでもなければ絶対に中に踏み入ることはないであろう最高級のグランドホテルマジェスティックのサロンで、満員のお客様の前でコンサートができるなんて。そして最高級な美味しいお食事の後で、先生の90分ものリサイタルが聴けるだなんて。
マスタークラスの話がふいに巻き起こって5ヶ月間もの間、先生と受講生たちとの架け橋に気を揉むことばかりでしたけど、先生は何度も何度も私のまとめ役が素晴らしかったと言葉をかけてくださり、この最終日のコンサート出演は、本当に何と言う最高のプレゼントだったことでしょう。
ひとりの人間としての尊敬と信頼、そして音楽への情熱。Mastroprimiano先生、ありがとうございます。
マスタークラスの初っ端から先生が惜しみなく教えてくださった、agogicalの読取り、harmony briséeの概念、ペダルの意味、résonanceについて、練習での要になるポイント、身体の使いかた、すべてがこれまで自分がさまざな文献や研究書などを通して考えてみたことはあっても奥義がしっかりとは掴めず、といったところのことばかりでしたが、曖昧だったそれら全てが繋がり合点がいったという感じです。合点が行くことほど人にとって安心感をもたらし、幸せなことはありません。
マスタークラス期間中は、朝8時半からの練習時間だった人もいましたが、私は10時開始のレッスンにアパートメントを出ればよく、13時からのお昼休みが練習時間でスナックをつまみながらの練習後、14時から15時がつかの間のコーヒータイム、そして午後のレッスン終了が19時。
ぎゅうぎゅう詰めの4日間でしたが、マスタークラス明けには旅ともの友達とヴェルバニアとフィレンツェ観光三昧で、羽を伸ばしリラックスしてきました。
そこで見聞きしたたくさんの文化遺産の数々には、ヨーロッパ文化の脈々とした息吹を感じました。
今回の渡伊経験は、これからの私に大きな力となってくれることでしょう。
私はショパン時代のPleyel演奏を通して、すこしでもオーセンティックなモダンピアノの奏法について、次の世代にしっかりと伝えていきたいとつよく思っています。
5月2日の【Allegro Mastro】コンサートで弾いた、ショパン 24のプレリュード抜粋より1曲、「雨だれ」を公開します。
https://youtu.be/m6DAvF55KVM?si=pqEvHvzivPzJ9ZYY
5/2【Allegro Mastro】concert とフィレンツェの風景
美しいVerbaniaマッジョーレ湖畔にて。
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